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東京高等裁判所 昭和39年(う)81号 判決 1964年5月26日

被告人 関根寅次

主文

原判決を破棄する。

被告人を罰金一〇、〇〇〇円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

公職選挙法第二五二条第一項の規定による選挙権及び被選挙権を有しない期間を三年に短縮する。

押収に係る現金二、〇〇〇円(昭和三九年押第一五号の一)は之を没収する。

理由

控訴趣意第一点について

原判決は適条として公職選挙法第二五二条第一項第三項を掲記しているが、右第三項の記載は法律の適用を誤つた違法があるとの主張について、

よつて按ずるに、本件は昭和三七年七月一日施行の参議院議員の通常選挙に関する違反事件であるから、昭和三七年法律第一一二号公職選挙法の改正法律附則第一条により、改正後の公職選挙法が適用される事案である。それ故公職選挙法第二五二条第一項の公民権停止期間の短縮については、改正後公職選挙法第二五二条第四項を適用すべきであるに拘わらず原判決が公職選挙法第二五二条第三項を掲記したのは単なる誤記とは認め難く、右に関する改正前公職選挙法の規定を誤つて適用した違法があるものと断ぜざるを得ない。ところで、改正前公職選挙法第二五二条第三項によると、同法第二二一条第一項第四号該当の罪を犯した者に対しても、選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用せず、若しくはその期間を短縮することができたのに対し、改正後の同法第二五二条第四項によると、同罪を犯した者については選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用すべき期間を短縮することはできても、これを全く適用しないことはできないこととなつたのであるから、右法令の適用の誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであると謂わざるを得ない。従つて、論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免かれない。

(その余の判決理由は省略する)

(裁判官 渡辺好人 目黒太郎 深谷真也)

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